中野ブロードウェイ3F「タコシェ」のこと

中野駅北口から商店街を突き抜けると、そこにはかの有名な中野ブロードウェイがある。まんだらけとらのあな、それから雑誌古本店など日本最重要カルチャースポットなわけだが、その中でも特に異様な空気感を持っているのが「タコシェ」なる書店である。

タコシェは知る人ぞ知る、と言うよりサブカル界(そんなもの死んだ?)では実はかなり有名で、中川翔子小明なんかのアッチ系のアイドルの人も愛していると言うもっぱらのウワサであるが、中に入るととにかく狭くて雑然としている。あまりの「田舎の駄菓子屋」感に入り口まで戻って「ココが本当にあのタコシェなのか!?」と名前を確かめたほどだ(失敬)。入り口付近の棚には商業サブカル誌や単行本が並べられているわけだが、普通の書店では窓際族といえるこれらの雑誌がこの書店では最もポップな存在として君臨しており、その他の新刊雑誌の名前を見てもとにかくピンと来ない。ゲイや漫画、批評・・・とにかく節操なく並べられている。横の棚にはA4の紙とホッチキスで一人で作りました!といわんばかりのミニコミが陳列され、よく分からないぐらいギッチギチに詰め込まれている。棚の下にはもうこれもよく分からないTシャツがぎっしりおいてあるのだが、店員の趣味なのか分からないけどダンボールにいっぱいのAVが詰まっていた。CDなんかもおいてはいるんだが、「DJまほうつかい」(西島大介先生のDJ名義)とか中原正也とかが最前列においてあって、普通のJ−POPなんかはもちろんあるわけがない。

(これはロフトプラスワンにもいえることだが)とにかく濃密で異様な情報で溢れかえっているがゆえに心身ともに疲弊してしまう。だから何度も何度も再来店を繰り返しながら、自分好みのミニコミを漁ることをおススメする。昼食をはさんで120分もの時間を費やし、僕はミニコミを三冊買った。一冊はA3の紙を二つ折りにした「小金井駅宇都宮線だもん」という批評雑誌で、もうひとつは「HATCH」という比較的よく作られているカルチャー誌(ミニコミ特集だったので参考図書として買ってみた)、んで最後ひとつは「人間観察」という正に人間観察することをテーマとした雑誌(最新号はおばさん特集だったと思う)である。

ミニコミといっても内容はまちまちで、一貫したテーマやメッセージ性なんかもない。しかし、とにかくその無政府さに酔いしれることができる。今という時間もクリエイティビティは搾取され続け、文字表現したい人にとってはなにも見えない荒野のような状態が広がっているが、タコシェはそのオアシスを少しだけ感じることができる場所だった。島宇宙島宇宙をつなぐ、書店ではなくもはや「媒介」とさえいえるのではないだろうか。